
あたしの好きな人
第7章 セフレの固執
「よお、綾乃、20歳になった瞬間から、良くカクテルばかり飲むようになったな?酔っぱらうなよ?」
相変わらず強めなお酒を飲んでいる。
「岳人~っ、久し振り~っ、やっと会えた~、暫くこっちに居られるの?」
「ああ、今ちょうど話してたんだけど、当分は大阪と行ったり来たりになるな?」
「え~?何で大阪~?さては女だな~?」
「……ばっか、そんなんじゃねぇよ、仕事だって!」
「その顔あやしい~!」
「うるせえよ」
他愛のない会話をして、他の常連客にも声を掛けて、過ごして、住み慣れた自分のマンションへと帰って行く。
冷蔵庫からビールをだして、ソファーへと座る。
冷蔵庫の中には、ビールとミネラルウォーターしか置いていない。
……咲良が居なくなってから、うちの冷蔵庫の中身はずっとビールだけが占めている。
食材を買う暇もなく、誰かに食事を作ることもない。
自分の為に作ることもない。
どこかの店に行き、そこで作る食事は仕事だから、そこで仕事の一貫として、賄いを作り、自分も食べて済ませるのがほとんどだ。
時々うちに来て泊まることもあった咲良、目を閉じれば、俺のベッドの上で、酔っぱらって眠る、
無防備な咲良の姿が浮かぶ。
そこに内緒のキスをして、それだけで喜んでいた、当時の自分がいじらしくさえ思う。
一度抱いてしまうともうダメだ。
ずっと一緒にいたい。
毎日同じベッドで眠り、他愛ない会話をして、明け方近くまで繋がり合いたい。
それも一生だ。
その為にはどんな犠牲も払う、嫌だったカミヤグループの社長としての肩書きも、
使えるモノは全て使ってやる。
咲良、お前を手に入れる為になら、俺の全てを投げうってやる。
そこまでしないと、あの面倒な女は手に入らない。
適当な女と今まで、適当な付き合いばかりしていたから、予測の付かない女の行動は読めなくて、
振り回されてしまう。
昔はそんな自分に戸惑い、プライドが邪魔して、認められなかったけど、
今では一生、振り回されて過ごしたいとまで、思っているなんてな。
机の引き出しを開けて、婚約指輪の入った箱をそっと開ける。
次に渡す時は、咲良が絶対に外さないように、そんな状況に追い込んでやるから。
あいつの方から、俺を求めるようにならなきゃ、意味がないんだ。
