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僕らのらんど

第5章 美女と兎

「あれ? ヒロキ、肩に糸くずついてるよ」

「ん?」

「…って、これ蜘蛛の糸じゃん!」

アカツキちゃんはヒロキさんの肩から蜘蛛の糸をつまむとパッパと振り払った。

「やだヒロキ、髪の毛にもついてるよ? どこか蜘蛛の巣があるような場所にでも行ったの?」

「いや、ずっと部屋で寝てただけだけど」

今ヒロキさん、しれっと嘘ついたよな?

「何言ってるぴょんか。蜘蛛の巣なんて、そこらじゅうにあるぴょんよ」

兎太郎がそう言うので、僕たちは部屋のあちこちを見回した。こんな綺麗な屋敷なのに、そんな蜘蛛の巣があちこちあるようには見えない。
するとちょうど使用人が朝食を運んできてくれたので、みんなの視線はテーブルに戻った。

「ヒロキ、体はもう大丈夫なのか?」

「うん、寝たらだいぶよくなったよ。悪いね、心配かけちゃって。今日はぼくも一緒に巨大蜘蛛退治に行くからね」

れんじの問いかけにそう答えると、ヒロキさんはコーンスープを口に含んだ。
僕も運ばれたコーンスープを口に含む。
瞬間、ジャリッと音がした。

「!?」

慌ててソレを吐き出すと、黒い物体がスープに浮かんだ。

「おえっ!」

「どうしました? アキラさん」

隣にいた月影が覗いてくる。

「え…?」

スープの中に浮かんでいたのは、なんと小さな蜘蛛だった。
さすがの月影も「ウッ」と顔をしかめる。
僕と月影のやり取りを見てた皆も、スープに浮かんだ蜘蛛を見て青ざめた。

「私、朝食はいらないわ…」

まだ手をつけてなかったまあやさんは片手で口を覆うと、青ざめた顔で食堂を出て行った。

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