テキストサイズ

僕らのらんど

第5章 美女と兎

『あら、まだここに残っていたんですの? あなたはもうヒトには戻れませんのよ。この体はもうワタクシのモノなのですから』

『……! ……!』

高らかに笑う巨大蜘蛛化の呉葉さんに、幽体の呉葉さんが泣き叫ぶ。
が、何を言っているのか聞こえない。

でもこれでだいたいわかった。
呉葉さんは蜘蛛に取り憑かれて体を奪われたのだと。そして幽体の呉葉さんは、僕にヒロキさんの危機を知らせたかったのだと。

「呉葉さん……ありがとう……」

僕はフラフラになりながら立ち上がった。
幽体の呉葉さんが哀しい顔をして僕に振り返る。

「必ず奴を倒して…呉葉さんの体を取り戻す!」

僕は巨大蜘蛛を睨み付けた。

『キャーハッハッハ! なんの力もない貴様に何ができる!』

突然、巨大蜘蛛化した呉葉さんの話し方と声が変わった。

「…何もできないけど…」

僕はチラリと兎太郎を見た。
充分、時間稼ぎはできたようだ。

「やっちまえ、兎太郎!!」

瞬間、小さなつむじ風が巨大蜘蛛の足元に発生した。

『ん? こんなものワタクシに効くわけ…』

「ダストデビル(塵旋風)!」

そう兎太郎が叫んだ瞬間、強烈な渦が発生し、風が巨大蜘蛛の体を巻き上げた。

『ギャアアアアアッ!!』

巨大蜘蛛は天井を突き抜け、上へと飛ばされていく。

「やった!!」

「まだ安心はできないぴょん! アキラは今のうちにヒロキを助けるぴょん!」

「わかった!」

僕はヒロキさんを助けるべく、巨大な蜘蛛の巣の網に足を引っかけた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ