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僕らのらんど

第8章 集結

「まあそうやな…。でもまだ100パーセントになってへん。じゃないと、助けられるもんも助けられんのや」

オレは虎生と睨みあった。

確かに多くの人を守る術があるなら、そうしたいと思うのは当然だ。
でもそこに自分の大切な人がいなかったら?
どうすることもできなくてただ死を独りで待たせるなんて、オレにはできない。

「もうここまで来たら、助かる助からないじゃないんだよ…。どうするかは人それぞれだろ!?」

「!」

「あんたには大切にしたい人はいないのか? もし助からなくても、オレは大切な人と最期を迎えたい!」

菜々が待ってるんだ。
泣きながら、助けてって……。

「……わかったわ、ひなたくん」

オレの訴えに答えてくれたのはつくし先生だった。

「つくし…!? なにゆうて…」

「リタイヤしたい人は申し出てください。ここからどうするかは、皆様にお任せします!」

すると何人かが手を挙げた。
その中にオレが知る人は一人もいない。

「つくし先生……いいのか?」

「大丈夫、責任は私が取るわ。あとログアウトしたら研究員の苑さんという人を尋ねて。きっと力になってくれるはずよ」

つくし先生はそう言うと、穏やかに微笑んだ。

「少しの間だったけど、ひなたくんと話せて楽しかったわ。心強い剣士様だった、ありがとう」

「つくし先生っ……」

オレはつくし先生に深く頭を下げると、今まで共に戦ってきた仲間たちに振り返った。

やんすさん、ゆず先輩、昭玄さん、クロさん、そして…まり先生。

「みんなごめん…。勝手なことして…最後まで一緒に戦えなくて…」

オレはみんなの顔をまともに見れなかった。
きっとみんなだって大切な人を守りたいはずなのに、誰もリタイヤの手を挙げなかったから。

「ひなたしゃん…あっしは悲しいです」

「やんすさん…」

「い、一緒にカラオケ行こうって約束したじゃないですか! いつ行くんですか!?」

「えっ…」

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