テキストサイズ

僕らのらんど

第8章 集結

「ひなたくん、そろそろいいかしら?」

つくし先生が声をかけてくる。
リタイヤするプレイヤーたちは、それぞれ仲間と別れを告げ集まっていた。

「今からあなたたちをレベル90のモンスターの前に転送させます。モンスターとは戦わないでください。そうすればすぐにログアウトできるでしょう」

つくし先生が説明する。
オレたちは一ヶ所に集まり、転送されるのを待った。

「虎生、お願い」

今まで黙ってみんなの様子を見ていた虎生に、つくし先生が声をかける。

「待って、ひなたくん!」

その時、まり先生がオレの元に駆け寄ってきた。

「まり先生……」

まり先生は目に涙を溜めている。

「ひなたくん、あのね、私っ……」

「……」

「私…最初に出会えたのがひなたくんで良かったって思ったの。モンスターから逃げる時にお姫様抱っこされた時はちょっとビックリしたけどね」

「…あ…」

オレはその場面を思い出して恥ずかしくなった。
確かまり先生、足が震えて動けなかったんだよな。

「私ね、本当はああいうのすっごくだめなの。最初のモンスターなんてゾンビだったし、すごく怖かった。でも頑張れたのは、いつもそばにひなたくんがいたから…」

「まり先生…」

「だから…もうひなたくんがいないんだなって思ったら寂しくて…」

まり先生の目からはどんどん涙が溢れてくる。

「私、頑張れるかなぁって、ちょっと弱気になったりして…」

「…っ…」

オレは戸惑った。
まり先生には貴史さんという婚約者がいた。
だからもうオレがいなくても、彼がまり先生を守ってくれるんだと思ってたけど…。

「あはっ、私教師なのに、大人なのに、全然だめだね……ごめんね……」

まり先生は無理して笑おうとする。

「…んなことない…」

オレは思わずまり先生の涙を指で掬った。

「まり先生がいたから、オレも頑張れたんだ。なんていうか…すごく安心できた」

「…っ…」

まり先生の瞳が大きく見開く。
オレはその瞳を忘れないように、まり先生をまっすぐ見つめた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ