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僕らのらんど

第11章 願い、そして…

まさかここは人が作った仮想世界だなんて言えない。
それにそれを口にしたら、今の僕のこの存在がなんなのかを認めてしまうことになる。

「…っ…」

何も言えないでいると、ヒロキさんはフウッと小さく息を吐いた。

「言っていいんですよ、アキラさん。いやむしろ教えてほしい」

「!」

「ぼくもずっと違和感を感じてるんです。ぼくは確かに死んだはずなのに、こうして生きてる。なんとなくわかるんです。ループしてるって…」

「!」

「アキラさんがぼくのことを知ってたのがその証拠です。きっとぼくは、大切な仲間と出会って一緒に戦ってきた…」

「ヒロキさんっ…」

「ぼくも、仲間に会いたいです。アキラさんの言う現実世界には行けなくても、また会えることができたらって……」

「……っ……」

僕も会えるんだろうか、まあやさんたちに…。
でもその間に僕の記憶はどんどん消されていくんじゃないのか? トシヤやヒロキさんのように。
まあやさんたちのことを忘れてしまうなんて絶対嫌だし、怖い…。

「あれ? 誰かいる」

ヒロキさんが窓の方を見て呟いた。
僕も振り返って見ると、ウサギの耳らしきものが見えた。

「兎太郎っ!?」

そうだ、兎太郎がいた!!
兎太郎は確かNPC……

だけどそこにいたのは、バニーズの店員たちだった。

「夜分遅くすみません。あの…私たち、あるウサギを探してまして…」

「!」

「ウサギ? どんなのですか? というか、あなたたちのその耳…」

「ええ、私たちはウサギ族の者です。そのウサギというのは、私たちの弟のような存在の者でして…」

「……兎太郎?」

僕が不意に口にすると、バニーズの店員たちはハッと目を見開いた。

「そうです! 兎太郎です! どこかでお見かけしたんですか!? 急にいなくなってしまってずっと探してるんです!」

「…そんなっ…」

まさか兎太郎はNPCじゃなかった!?
プレイヤーという言葉に反応しなかったから、ずっとNPCかと思ってたのに……。


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