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僕らのらんど

第2章 弟子と師匠

こいつがトシヤを……トシヤを殺したかもしれないんだ。
だから生かしておくわけにはいかない。

「……くっ……」

僕は歯を食い縛って、木の棒を両手で握りしめた。

「……よくもトシヤをっ……」

木の棒を振り上げる。
頭を数発殴れば死ぬかもしれない。

「……っ……」

早く棒を、降り下ろせ。

「……ハアッ……」

早く──!

「……ハアハアッ……」

体が動かない。
心臓が激しく波打って、うまく呼吸ができない。

「……なんでだよっ……」

気絶してるやつを殴ることもできないのか僕は!

『無駄な殺生はしたくないので』

さっき男が言った言葉を思い出す。
殺生──そうか。
今まで人を殴ったこともなく普通に生活してきた僕が、いきなり生き物を殺せるわけがないじゃないか。

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