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僕らのらんど

第11章 願い、そして…

そう言うとまりは嬉しそうにオレの隣に並んだ。

まりは現実世界では教師ではなかった。
教師になる憧れはあったらしい。
本当は岐阜で働く普通のOLで、彼氏とラグナロクランドに遊びにきていたらしい。

その彼氏とはすぐに別れたみたいで、ラグナロク事件後、関係者が警察に呼ばれた時にオレと出会い、オレたちは付き合うことになった。
といってもオレはまだ学生だったし、岐阜と大阪の遠距離でなかなか会えなくて、メールと電話のやりとりだけの付き合いだったんだけど…。

「ふふ、ひなたくん、背伸びた? なんだか大人っぽくなったよね」

「まりはあの頃と変わってないよな。あ、少しふっくらした?」

「も~!そういうこと言わないでよっ。あ、やんすさんだ! お~い!」

まりが大きく手を振る。
その先には、帽子を被ったやんすさんがこっちに歩いてきていた。

やんすさんも全くあの頃と変わっていなかった。
変わったのは頭か…。

「え、やんすさん、その頭どうしたんですか!?」

「い、いやあ~、髪の毛ボサボサだったしサッパリしようと思ったんですがね、どこでどう間違えたのか丸坊主にされてしまいましてねっ…」

「いいじゃないですかぁ~。髪ならまた生えてきますってぇ!」

いつのまに来たのか、昭玄さんが隣に立っていた。

「昭玄さん、お久しぶりです」

「ひなたはんはいつ見てもイケメンですなぁ~! ちょっと髪切らせてもらっても…」

「遠慮しときます」

オレは即却下した。

昭玄さんは大阪に住む理容師だった。
仮想世界での見た目とは違い、体格は普通で、顔も全然強面じゃなく穏やかな人だった。
ただノリは仮想世界の時と同じだった。

やんすさんは最近やっと就職できたみたいで、それで昭玄さんの床屋に行ったらしいけど、見事丸坊主にされてしまったらしい。
見た目は仮想世界と変わらないけど、目が意外とキリッとしてるから丸坊主にして正解だったんじゃないかと思った。

「じゃあ、行きましょうか」

オレたちは新幹線に乗って東京に向かった。


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