友達からのはじまり
第1章 男友達の関係
「そりゃあ、そうに越したことは…、何でそんなことが気になるわけ?」
会話の内容が、あんまり得意分野じゃないから、話を反らそうと聞いてみる。
黒瀬はふっと笑った。
「そりゃあ、好きな女の子にはちゃんとしてあげたいって思うからな?」
……がぁ~ん。
爽やかな笑顔が眩しい。
やっぱり黒瀬には、好きな女の子がちゃんといるんだ。
「……ふ、ふ~ん、黒瀬、好きな子がいるんだ?同じ大学の子?」
「うん、そうだよ」
あっさり言われて、内心動揺しながら、同じ大学の可愛い子を思い浮かべる。
「……可愛い子?」
「うん、とっても可愛い子」
にこにこ笑いながら、はっきり言われて、胸が苦しくなる。
「そ、そっか…、黒瀬って可愛い系が好きなんだ?綺麗系かと思った」
「たまたま俺の好きな女の子が、背が低くて可愛い子でね?今までそういう子と付き合ったことがないから、桜井に聞いてみたわけ」
「……そ、そっか…」
あたしは、身長は低いほうだ。
黒瀬の好きな、可愛い子じゃあないけれど……。
「……じゃあ、試しにあたしとしてみる……?」
ボソッと呟いてしまい、
驚いたように、目を見開く黒瀬に、まじまじと見つめられて、
顔に熱が一気に集まった。
「……なぁんて…っ、今のウソ…だから……っ…!」
誤魔化すように笑って、視界が急にぼやけてしまい、
慌てて立ち上がった。
「……桜井っ?」
急いで逃げるようにして、走ってカフェを出た。
……ヤバい、ヤバい、ヤバい。
今の不自然だったっ、
あたしが黒瀬が好きだってこと、
絶対にばれちゃった……っ。
もう、普通の友達になんか、戻れないっ。
カフェを出て、キャンパス内をでたらめに走って、涙が止まらないのに。
「……桜井っ!」
……何故だか黒瀬があたしを追いかけて来る。
「……ついて来ないでよっ!」
「いやだ!」
キャンパス内は広くて、見通しがいい。
すぐに捕まってしまう。
「……そんなにしたいのっ?」
泣きながら叫ぶあたしを、後ろから抱きしめられて、すっぽりと捕まってしまう。