氷華~恋は駆け落ちから始まって~
第6章 運命を賭ける瞬間(とき)
「たとえ真実がどこにあれ、結果としてこうなったのだ。トンジュ、人は時には真実や過程よりも結果を重んじねばならない。すべてが丸くおさまるように考えることが肝要なのだ」
ヨンセは自らを落ち着かせるように眼を瞑り、ゆっくりと開いた。
「トンジュ、サヨンから話はすべて聞いた。必要としている人に大量の草鞋を売り、大儲けした話も、それがそなたの才覚で成し遂げられたこともな」
「大行首さま、そ、それはサヨンが―」
トンジュが烈しく首を振った。
「良いから、黙って聞きなさい。先刻も申したであろう、真実や過程よりも、結果を重んじねばならないと。正直、サヨンとそなたがいなくなってから、私はそなたを憎んだ。折角上手くゆきかけていた李氏との縁組みや商売上の取引もすべてご破算になり、私は李スンチョンに多額の慰謝料を支払った。李氏との縁談が壊れたことで、私もコ商団も大変な損失を蒙ったのだ。それだけではない、世間的な信用も失墜した。そなたさえ、サヨンを連れて逃げなければ、このような多大な損害はなかった」
ヨンセの声は厳しかった。
トンジュの当初の目論見に反して、李スンチョンは黙って引き下がりはしなかったようだ。が、それも無理からぬことともいえる。今回の件で、スンチョンとその息子は大いに面目を失ったのだ。
それでも、ヨンセが慰謝料を払っただけでスンチョンが引き下がったのは、不幸中の幸いであった。やはり、その点は、トンジュの指摘したように、必要以上に騒いで世間の注目を集めれば、恥の上塗りになると判断したのだろう。流石に、引き際を心得ていたのだ。
トンジュはうなだれ、顔も上げられないようだ。
「申し訳ありません。幾ら謝っても、お詫びのしようもないほどです」
「だが、幾ら終わったことを嘆いてみても、前には進めない。失敗から学んで先に活かすのが商人の生き方だ。トンジュ、そなたが草鞋を売って得たという金を元手に商いを始めるのだ。しかし、言っておくが、私は援助はしない。ただ、そなたが忠言を必要とするときには、いつでも歓んで忠告はしよう。そなたがどれほどの器かを、自分の力で私に示してくれ」
トンジュがハッと顔を上げた。
ヨンセは自らを落ち着かせるように眼を瞑り、ゆっくりと開いた。
「トンジュ、サヨンから話はすべて聞いた。必要としている人に大量の草鞋を売り、大儲けした話も、それがそなたの才覚で成し遂げられたこともな」
「大行首さま、そ、それはサヨンが―」
トンジュが烈しく首を振った。
「良いから、黙って聞きなさい。先刻も申したであろう、真実や過程よりも、結果を重んじねばならないと。正直、サヨンとそなたがいなくなってから、私はそなたを憎んだ。折角上手くゆきかけていた李氏との縁組みや商売上の取引もすべてご破算になり、私は李スンチョンに多額の慰謝料を支払った。李氏との縁談が壊れたことで、私もコ商団も大変な損失を蒙ったのだ。それだけではない、世間的な信用も失墜した。そなたさえ、サヨンを連れて逃げなければ、このような多大な損害はなかった」
ヨンセの声は厳しかった。
トンジュの当初の目論見に反して、李スンチョンは黙って引き下がりはしなかったようだ。が、それも無理からぬことともいえる。今回の件で、スンチョンとその息子は大いに面目を失ったのだ。
それでも、ヨンセが慰謝料を払っただけでスンチョンが引き下がったのは、不幸中の幸いであった。やはり、その点は、トンジュの指摘したように、必要以上に騒いで世間の注目を集めれば、恥の上塗りになると判断したのだろう。流石に、引き際を心得ていたのだ。
トンジュはうなだれ、顔も上げられないようだ。
「申し訳ありません。幾ら謝っても、お詫びのしようもないほどです」
「だが、幾ら終わったことを嘆いてみても、前には進めない。失敗から学んで先に活かすのが商人の生き方だ。トンジュ、そなたが草鞋を売って得たという金を元手に商いを始めるのだ。しかし、言っておくが、私は援助はしない。ただ、そなたが忠言を必要とするときには、いつでも歓んで忠告はしよう。そなたがどれほどの器かを、自分の力で私に示してくれ」
トンジュがハッと顔を上げた。