氷華~恋は駆け落ちから始まって~
第2章 氷の花
トンジュが顔を上げ、サヨンを見た。
「痛くないと言ったでしょう。大丈夫、もう痛みはないから、構わないで」
しかし、トンジュはサヨンの声が聞こえないとでもいうように行動を再開した。チマと次いで下のズボンの裾が引き上げられ、白い脹ら脛が露わになる。
屋敷を出たばかりに見たときは薄赤かったその箇所が青黒く染まっている。トンジュが触れる度に、ズキンとした傷みが走った。
「こんなに酷くなっていても、痛みはないというのですか?」
痛みに顔をしかめるサヨンを見ながら、トンジュが静かな声音で言った。
サヨンは痛みの声を洩らすまいと唇を噛みしめ、トンジュの物問いたげな視線から顔を背けた。
トンジュは小さな溜息を吐いた。
「お嬢さまがここまで頑固な人だとは思ってもみませんでしたね」
サヨンはキッとトンジュを見た。
「私の方こそ、あなたが人を脅すような人間だとは考えたこともなかったわ」
「何を怒っているのですか? 俺が何かお嬢さまを怒らせるようなことをしましたか?」
余裕たっぷりの顔をサヨンは殴りつけてやりたい衝動に駆られた。握りしめた右の手をギュッともう一方の手で握り込む。
「もう良いから、私に構わないでちょうだい」
トンジュの手はまだサヨンの脚の上にある。こんな男に触れられているのかと思っただけで、嫌悪感で鳥肌が立ちそうだ。
サヨンがトンジュの手を振り払っても、トンジュは眉一つ動かさなかった。
「そんなに俺に触れられるのが嫌なんですか」
頑なに口をつぐむサヨンに、トンジュは微笑む。
「まあ、良いでしょう。強情を張れるのも今の中だ。今のあなたは俺しか頼る人間がいない」
サヨンは怒りと屈辱に拳を握りしめ、トンジュを睨んだ。
フッとトンジュが笑みを零す。
「どうしました? 俺と一緒にいるのが嫌なら、逃げたら、どうです? 俺は追いかけはしません。どこへなりと、お嬢さまのお好きな場所に行けば良い」
「人でなし」
悔しさに身を震わせながら言うと、トンジュがまた笑った。
「名家のお嬢さまが口になさるような言葉ではありませんね」
「痛くないと言ったでしょう。大丈夫、もう痛みはないから、構わないで」
しかし、トンジュはサヨンの声が聞こえないとでもいうように行動を再開した。チマと次いで下のズボンの裾が引き上げられ、白い脹ら脛が露わになる。
屋敷を出たばかりに見たときは薄赤かったその箇所が青黒く染まっている。トンジュが触れる度に、ズキンとした傷みが走った。
「こんなに酷くなっていても、痛みはないというのですか?」
痛みに顔をしかめるサヨンを見ながら、トンジュが静かな声音で言った。
サヨンは痛みの声を洩らすまいと唇を噛みしめ、トンジュの物問いたげな視線から顔を背けた。
トンジュは小さな溜息を吐いた。
「お嬢さまがここまで頑固な人だとは思ってもみませんでしたね」
サヨンはキッとトンジュを見た。
「私の方こそ、あなたが人を脅すような人間だとは考えたこともなかったわ」
「何を怒っているのですか? 俺が何かお嬢さまを怒らせるようなことをしましたか?」
余裕たっぷりの顔をサヨンは殴りつけてやりたい衝動に駆られた。握りしめた右の手をギュッともう一方の手で握り込む。
「もう良いから、私に構わないでちょうだい」
トンジュの手はまだサヨンの脚の上にある。こんな男に触れられているのかと思っただけで、嫌悪感で鳥肌が立ちそうだ。
サヨンがトンジュの手を振り払っても、トンジュは眉一つ動かさなかった。
「そんなに俺に触れられるのが嫌なんですか」
頑なに口をつぐむサヨンに、トンジュは微笑む。
「まあ、良いでしょう。強情を張れるのも今の中だ。今のあなたは俺しか頼る人間がいない」
サヨンは怒りと屈辱に拳を握りしめ、トンジュを睨んだ。
フッとトンジュが笑みを零す。
「どうしました? 俺と一緒にいるのが嫌なら、逃げたら、どうです? 俺は追いかけはしません。どこへなりと、お嬢さまのお好きな場所に行けば良い」
「人でなし」
悔しさに身を震わせながら言うと、トンジュがまた笑った。
「名家のお嬢さまが口になさるような言葉ではありませんね」