テキストサイズ

氷華~恋は駆け落ちから始まって~

第2章 氷の花

「そうそう、一つ言い忘れてました。天上苑伝説の娘の話ですが、今、あの池に毎年咲く蓮は実は父親が植えさせたものではなく、娘の涙だという逸話があるんですよ」
「蓮の花が娘の涙?」
 思わず訊き返してしまう。
 トンジュが感情を宿さぬ瞳で見返し、頷いた。
「娘の流した幾千もの涙の滴が蓮の花となったと。まあ、こちらは単なる伝説でしょうが」
 トンジュは言うだけ言うと、今度こそ踵を返して歩いていった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ