氷華~恋は駆け落ちから始まって~
第4章 涙月
「あなたのふるさとの話を聞いている中に、そう思ったのよ。かつてこの場所にあったのと同じような、人と人の温もりがある村、すべての人の心のふるさとのような村をまた作ることができればと思った。あの言葉に間違いはないわ。でも、それは所詮、あなたの夢であって、私の夢でない。トンジュ、私はこれから時間をかけて見つけていかなければならないの。お父さまが言っていたように、自分が何の役割を果たすために生まれてきたかを。そして、生きる意味を見つけ出すのは、誰でもない自分自身だと思うの」
夢は誰かに見つけて貰うものじゃない、自分自身で探し出し、努力して現実に変えてゆくものなのよ。
サヨンは小さいながらも、はっきりとした声で言い切った。
「同じ夢を見ながら一緒に歩いてゆくことはできないんですか?」
「―ごめんなさい」
サヨンは小さく息を吸い込んだ。トンジュの自分への想いは本物だ。たとえやり方は間違っていたとしても、トンジュはサヨンだけを見つめ、真摯に求愛している。
だが、彼の想いが本物であればあるほど、サヨンは安易な応えは返せないと思ったのだ。曖昧な気持ちを抱えたまま、彼についてゆくと返事はできない。
「謝らなくて良いんですよ」
ややあって、ポツリと言った。
「お嬢さまに謝られたら、俺が余計に惨めになるだけだ」
「本当に申し訳ないと思っている。でも、今の私にはこんなことしか言えないの。判って」
サヨンは踵を返し、家に戻ろうとした。
と、突如として、トンジュが叫んだ。
「判らない。俺には判らないッ。ねえ、ちゃんと話しましょう。もっとよく話し合えば、サヨンさまも俺の気持ちを判ってくれるはずだ」
サヨンは前方を見つめたままで静かに言った。
「話すことは、もうないわ」
「何でそんな残酷なことを言うんだ? 俺の気持ちが判っていながら、何故!」
「あなたは私を町に連れてゆくつもりも、ここから出すつもりもないのでしょう。幾ら話し合いを重ねたとしても、同じことの繰り返しになるだけよ」
「俺とは、まともな話し合いもできないと?」
トンジュの顔が蒼白になっていた。
夢は誰かに見つけて貰うものじゃない、自分自身で探し出し、努力して現実に変えてゆくものなのよ。
サヨンは小さいながらも、はっきりとした声で言い切った。
「同じ夢を見ながら一緒に歩いてゆくことはできないんですか?」
「―ごめんなさい」
サヨンは小さく息を吸い込んだ。トンジュの自分への想いは本物だ。たとえやり方は間違っていたとしても、トンジュはサヨンだけを見つめ、真摯に求愛している。
だが、彼の想いが本物であればあるほど、サヨンは安易な応えは返せないと思ったのだ。曖昧な気持ちを抱えたまま、彼についてゆくと返事はできない。
「謝らなくて良いんですよ」
ややあって、ポツリと言った。
「お嬢さまに謝られたら、俺が余計に惨めになるだけだ」
「本当に申し訳ないと思っている。でも、今の私にはこんなことしか言えないの。判って」
サヨンは踵を返し、家に戻ろうとした。
と、突如として、トンジュが叫んだ。
「判らない。俺には判らないッ。ねえ、ちゃんと話しましょう。もっとよく話し合えば、サヨンさまも俺の気持ちを判ってくれるはずだ」
サヨンは前方を見つめたままで静かに言った。
「話すことは、もうないわ」
「何でそんな残酷なことを言うんだ? 俺の気持ちが判っていながら、何故!」
「あなたは私を町に連れてゆくつもりも、ここから出すつもりもないのでしょう。幾ら話し合いを重ねたとしても、同じことの繰り返しになるだけよ」
「俺とは、まともな話し合いもできないと?」
トンジュの顔が蒼白になっていた。