恋人⇆セフレ
第2章 お前がそうするなら、
「まっ…!!」
真木!そう叫ぼうとして、慌てて口を噤む。
真木と俺はもう恋人でもなんでもない。ましてや殆ど縁を切られた状態だ。そんな俺がこんな所に居たら、まるで俺が未練があるみたいじゃねえか。
そのことに気がついて、咄嗟に塀の陰に身を隠す。
心が無駄にバクバクと動いていて、気持ちが悪い。
「つーか、急に会わないっつったのはこーいうことかよ」
腹が立つ、吐き気がする。
掌に爪が食い込むほど拳を握る。
いつからだよ。いつからあの女と付き合ってた?俺とセックスしてる間、「やっぱり女の方がいい」って思ってたのか?
「…笑わすなよ真木」
ギ、と歯を鳴らして、もう一度バレないようにそっと覗く。
視線の先には、酔っ払った女を大事そうに抱えて、入り口のロックを開ける真木が居て。
これからつい2週間前に俺を抱いたあのベッドで化粧の濃い女を抱くのかと思うと、一層腹が立った。
「いーよ。お前がそのつもりなら、俺だって他の男に抱かれてやるからな」
ムカムカのやりどころが分からなくて、他の奴に委ねようと、マンションとは真反対の方向に足を進める。
そうしないとどうにかなりそうだった。俺は捨てられたっていう事実から逃げるには、こういう方法しか思いつかなかったんだ。