恋人⇆セフレ
第9章 「初恋の」
「真木」と気安く呼べなくなってしまった名前を飲み込んで、不貞腐れた気持ちのままベンチに座る。
かと言って真木がクレープを買う姿を見るのもムカつくから、長閑な景色をボーッと眺めることにした。
ーーきっと、以前の俺なら、さっきの問いに「食う」と即座に言えていただろうが、今はますます真木に対して素直になれずにいる。
自分のダメなところはもう分かってしまっているんだ。伊織にはもっと素直になってやらねば。と元気に飛ぶ雀を眺めながら密かに決意した。
「ーーっと、そういえば伊織に着いたこと連絡しねえと」
伊織にできるだけ連絡すると約束したのを思い出し、携帯を取り出す。普段あまり連絡しない分、忘れがちだから気をつけないといけない。
俺を見送る時も、「志乃さんが連絡不精なのは知ってますが、一日一回は連絡してくださいね!?」と、伊織はきゃんきゃん吠えていた。
もし、こまめに連絡をとってやったら、どんな反応が返ってくるんだろうか。
「随分楽しそうだな」
「うわ、」
と、伊織の返信を想像していたからか、突然の気配に驚いて携帯を落としそうになった。
慌てて両手で掴み、顔を上げると、無表情の真木とイチゴのクレープが目に入る。
い、いつの間に。