恋人⇆セフレ
第9章 「初恋の」
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「ふーーじーー!!朝からずっと何携帯見てんだあ!?」
「っいってぇ」
食堂にて、ご飯にありつこうとお箸を持ったところでドカッと勢いよく突進してきたのは、同じバスケサークルの東だ。
大体突進して現れてくるせいで、初めの会話が「いってぇ」というのが定着しつつある。
志乃さんが疲れた様子で東のことを「猿」と呼んでいたけど、あながち間違いではない元気さだ。
「いつも突進してくるなよ、危ないだろ?」
「わりーわりー!藤見つけたら思わずな〜!」
全然わりーとは思ってない様子に、くすっと笑ってしまう。この異様な元気さは、偶に鬱陶しいけれど元気を貰う時もある。
今は少し、助かる元気さだった。
「あっそれ1日限定のチキン南蛮&唐揚げ定食じゃん!」
「そう。さっきの講義が早く終わったから、まだ残ってたんだよね」
「南蛮定食も売り切れてたんだよなー。なあなあ、福神漬けやるから一個交換しよーぜ」
「対価が見合わなさすぎじゃない?いいけど」
今日遅めに来た東はカレーだ。昨日も食券争奪戦に惨敗してカレーを食べていた東を思い出して、仕方がないからチキン南蛮を二つあげた。
なんだか母親になった気分だ…。
「あ、そういえばさ!聞いた?染島とアリサちゃんの話」
「え?知らないっていうか、誰だっけ…」
チキン南蛮を嬉しそうに頬張ったかと思えば、何やら興奮した様子で前のめりに大声を出した東。
名前を連ねられたけれど、顔と一致しなくて首を傾げていれば、「あぁ、そうだった、お前はそういう奴だった!」と何やら失礼な言葉を浴びせられる。