恋人⇆セフレ
第9章 「初恋の」
酷すぎるネーミングセンスに、飲んでいた味噌汁を吹き出しそうになった。
「ごほっ変なあだ名つけないでくれる?」
咽せながらもツッコむと、東はシシッと歯を見せて笑う。東の憎めないところはこういうところだ。
「真面目で結構じゃん!そういうところがいいーって女子株すげー高いんだぞ?」
「そんな株聞いたことないんだけど…」
「まあ、藤君にはもう大切な人がいるみたいですし??興味ないでしょうねー」
「!?」
フゥ、と一度落ち着けて飲んでいた味噌汁を、また吹き出しそうになる。
今度は見事に器官に入り込み、何度も咳き込みながら目の前の男を凝視する。
なんで!?俺、誰にも言ったことないけど!?
咽せていることと、バレてしまっていることで、顔が赤くなっているのが自分でも分かる。
そんな俺を、東もまんまるい目を更に丸くさせて、キャー!なんて気持ち悪い声を出して、ずいっと身を乗り出してきた。
「うそー!マジなの?」
はっ?と今度は俺が身を乗り出す。
「っお前っカマかけたの?」
「いや、さっきの回答があまりにもマジだったから、なんとなく…」
「………」
ーー本当にこの男を猿山に投げ入れてやろうかと思った。
ジトリと睨むと、目を泳がせて、今度は何も奪われまいとでもいうようにカレーをかきこむ東。
だけど、これは完全に俺の失態だ。カレーは大人しく食べさせて、深く溜め息を吐いてから頷いた。