恋人⇆セフレ
第9章 「初恋の」
「…いるよ。ずっと好きだった人なんだ」
初めはハリネズミみたいに全身の針を尖らせて威嚇していたのに、最近は柔らかい笑みを浮かべて隣に寄り添ってくれる。
素直じゃないのに、寂しがりやな人。
誰よりも大切な人。
「……まじか…藤のそんな顔、初めて見た…」
どんな顔してるんだよ、と思ったけれど、どうせゆるゆるの顔になっているだろうから、敢えて聞くことはしない。
もうこれ以上は答える気はないから、飲むのに随分時間のかかった味噌汁をぐいっと飲み干した。
「あーあ、俺の藤がとられた」
「いつどこでお前のになったんだよ」
「親友の俺に冷たくねえか!?」
「親友だからじゃない?じゃあ、俺体育館行くから」
「えっ待って待って俺も行く!」
「じゃ、1on1ね」
サッと荷物を肩にかけてトレーを手に椅子から立ち上がる。今日一日サークルの時間まで体育館を使う予定はないはずだから、余計なことを考えないようそこで体を動かしたい。
「はあ…早く明後日にならないかな」
また一人でモヤモヤしてることを志乃さんに伝えたら、「ガキだな」って呆れた顔で笑われるだろうかーーー?