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恋人⇆セフレ

第9章 「初恋の」





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とっぷりと日が暮れる頃には、取材する場所を殆ど巡っていた。


それくらい長く歩き回り、流石に疲れ切った俺たちは、旅館の一室でダラダラと寝転んでいた。



初め通された時は同じ部屋だということに驚愕したが、続き間なだけで、きちんと寝る場所に仕切りの襖があると聞かされて安心したのがついさっき。



しかし、寝る準備を行わずこのまま寝れたら幸せだと思う程には睡魔の限界が近い。



「志乃、寝る前に温泉に入らないと」


「んん…」


真木の淡々とした声に、既に目を瞑った俺は曖昧に答える。
単調で低い真木の声は、静かすぎて更に眠気を誘う。


「明日は朝から学校に行くから、風呂に入る時間はないぞ」


「んん〜…おかんか…」


「志乃の母親になった覚えはない。ほら、起きろ」


ぽんぽんと遠慮がちに叩かれた頭。
もしこの手が伊織のものだったなら、「抱っこして」と言っていたかもしれない。



そのくらい今日は疲れている。
しかも、身体的なものだけでなく、精神的にも疲労を感じる。一日中俺を恋人のように扱ってくる真木に、身を固くしてしまうのだ。



まさか、こんなふうに感じる日が来るとは思わなかったけれど。



「志乃…?」


「ん…」


うつら、うつら、瞼をゆっくり瞬かせると、近くに座った真木の膝が見えた。顔は見えない。



「……部屋の温泉でいいなら、俺がーーー…」



と。



真木が何か言おうとしたところで、ブブッと携帯が短く振動した。
あまりにも眠い為後でいいか。と思ったが、すぐにハッとして携帯をわしずかむ。


(伊織…!!?)



その予感がした瞬間から、眠気も一瞬にしてどこかへ消えた。



やべえ!携帯見る暇なくて全然確認してなかった…!



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