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恋人⇆セフレ

第9章 「初恋の」





画面を開くと、案の定【伊織】という文字が。
心の中で頭をわしゃわしゃにしながら、深く反省する。


あぁ、俺の馬鹿。着いた時真木を無視して連絡をしておけばよかった…!
きっと怒ってはいないだろうけど、落胆はさせたはずだ。



「っちょっと出てくる」


「……。分かった。夏でも夜は寒いから、あまり遅くなるなよ」


「ん」



真木への返事も半ばに、小走りで旅館を駆けて中庭に出る。


夜の肌寒さは、寝る態勢だった体を目覚めさせてくれる。田舎なこともあって星も美しく、虫の声が心地よい。


昼と違って、木のさざめきと、水の流れる音しかしない場所で息を吐き、一旦心を落ち着かせた。



周りに誰もいないな。よし、と、無駄に気合を入れて伊織からのメッセージを開く。



別に伊織からのメッセージは初めてじゃないのに、何故かいつもより嬉しくてドキドキするのはなぜだろう。




もしかしたら、寂しいとか、そんなことをーーー…




「ア"?」



しかし、開いて一番最初に出た声は、恋人からきたメッセージに対して相応しくない声だった。



いや、聞いてほしい。だって、これは仕方ないだろう。



複数枚写真が送られてきたのだが、その写真の画面の殆どを占めているのは、いつの日か会った猿男だったからだ。しかも、全部だ、全部。



更に腹が立つのは、その後にポンッと送られていた文章。


【志乃さん、お仕事お疲れ様です。
久し振りの地元はどうですか?俺は昼から予定がなかったので、東と1on1しました。その後家で飲んでたんですけど、東は今潰れてます笑】



どういうことだ、藤伊織。



その後家で飲んだ…???そこで終わるならまだしも、まだこの時間も一緒にいるだと…??



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