恋人⇆セフレ
第9章 「初恋の」
自分のことを差し置いて、ブチギレる。
俺はすぐに電話のアイコンを押して、伊織を呼び出した。
ーーーーーー出たらソッコー拗ねてやる。
イライラモヤモヤ。そんな強い心意気だったのに…、
『っ志乃さん!?』
「ーーーー、」
3回コールが鳴らないうちから出た男の声が、なんとも嬉しそうなものだから、「もしもし」と小声で返してしまった。
ポスッと、石段に腰掛けて伊織の声に耳を傾ける。
クソ、これだから子犬ver伊織は駄目だ。
『まさか電話を貰えるとは思わなかったので、嬉しいです。そっちはどうですか?』
「…ん。疲れた」
全く答えになっていない俺の返答に、クスクスと電話越しから笑う声が聞こえる。
つうか、伊織とは何気に電話で初めて話すけど、こんなに声低かったか?普段は聞き落としそうな音すらも拾うせいで、喉を鳴らす声が間近で聞こえてドキドキしてしまう。
『俺も、昼から夕方過ぎまでずっとバスケしてたから流石にクタクタです。お酒も少ししか飲んでないのに、結構酔っちゃってるんですよ』
「……」
イラッ
伊織の言葉で、電話をした目的を瞬時に思い出してドキドキをかき消した。
そうだ、それが聞きたいんだった。
「お前、今どこ?」
『えっ…?どこって、東京ですけど…』
唐突に声が低くなった俺にびっくりしたのか、素っ頓狂な言葉を返してくる伊織の胸倉を掴んでやりたくなる。
そこで天然を発揮されるとこっちが肩透かしを喰らうからやめてほしい。