恋人⇆セフレ
第9章 「初恋の」
今なら死んでもいいと思えるくらい恥ずかしさで爆発しそうだ。
俺はどこの中学生男子だ??ピュアピュアなのか??
さっきまで涼しいと感じていたのに、湯気が出そうなくらい全身に熱が回っている。
『はあ…ねえ志乃さん』
「…何」
『もう会いたい』
率直な言葉に、心臓が一度。ドクンと大きく脈打つ。
『今、絶対可愛い顔してる』
「…してねえ。つーかしてても絶対見せねえ」
伊織は侮れない。どんなに怒っていても、簡単に俺の火を鎮火させて、さらには怖いもの知らずで抱き込んでくる。
こんなんじゃ、また恥ずかしいことを口走ってしまいそうだ。
『ーー…じゃあ、声は聞かせてくれますか?』
「はあ?もう十分聞いただろ」
『可愛い声のことです』
「可愛い声って………っ!!?」
まさか。
伊織の言いたいことを察して、中庭の真ん中で叫びそうになった。
慌てて手で口を押さえ、辺りを見渡しながらコソコソと声を小さくして話す。
「馬鹿!お前酔ってんのか!?」
『今日俺は少ししか飲んでないですよ。純粋に、志乃さんが可愛くてたまらないのに抱き締められないから、せめて声だけ聞きたいんです』
「なっで、でも俺今外だし…ッ」
旅館の中庭がダメでも、部屋に戻れば真木がいる。そんなのますますやってやるわけにはいかない。