恋人⇆セフレ
第10章 真と偽
「……信じられなくなったんだ。ただ執着してるだけかもしれない俺の気持ちも、お前の気持ちも」
くっと、喉が鳴った。
何か言おうと思ったけれど、振り返った真木の表情があまりにも不安定だったから、言葉は出ることなく飲み込まれた。
「そんな時、1人の過激なファンに、身元やお前と付き合っていることがバレて、脅されたんだ。
もし私と付き合ってくれなかったら、このこと全部バラしてやる。と」
その衝撃の事実に、「え」と、今度は我慢できずに思わず声が漏れた。
ドクンドクンと、心臓が耳元で鳴っているような錯覚が起こるほど強く脈打つ。
もしかして、あの時の酔っぱらってた女ーーー?
なに、それ。なんだよ、それ。
だって、お前、そんなこと一言もーーー…。だから俺は裏切られたと思って、散々お前にひどいことをーーー…。
俺がそう言いたいことを感じ取った真木が、ふっと表情を緩める。
「言っただろ?信じられなくなっていたんだ。
お前が俺といるのは、お前が辛い時に側にいた俺に、感謝の気持ちがあるからだと思ってしまっていたから、俺の立場が危うくなったと知ったら、簡単に離れてしまうと思ったんだ」
「そんなことーーー…」
なかった、んだろうか。
もし、こいつの小説家としての命が危うくなってしまったら、俺はそれでもこいつのそばにいただろうか?
いや…。
「…違わないかもしれない」
「うん、だと思った。だから、どうにかすることはきっとできたけど、お前の耳に入るより、その女の満足がいくように振る舞って、またお前を迎えに行けたらなんて、馬鹿なことを考えたんだ」