恋人⇆セフレ
第11章 空白
『ーーーーわたしはどうやら、夢の中で夢を見ているようだ。
真っ暗闇の世界の果てに、眩しいほどの黄金色がこっちに来いと手招きをしている。
わたしは誘われるがままに、その光に導かれ歩き出した。
上も下も、右も左も、空間がどれほどあるのか認識できない。だが、確かにここに道があると頭の中で理解し歩いている。
自分の意思というよりも、強い何かに引っ張られるように。まるで、運命の導きのようにーーーーー』
そうして、視界が徐々に黄金色に染まり、眩しさに目が慣れてくると、金色に輝くススキの中でポツンと立っていた女性。
少し先に聳え立つ大きな桜の木の下には、見知らぬ1人の男性がいて、何かを訴えるように女性を見ている。
それが夢の中での彼らの出会い。何度も何度も生まれ変わっては巡り合うほどの強い想いが、再び2人を繋ぎ合わせた瞬間。
あの人と志乃さんも、きっと運命だと思うほど強く惹かれあったのだろう。
初めは警戒していた女の人だが、その男と夢の中で逢瀬を重ねるほど、好意を抱くようになる。
何故かその世界には音がないから、声を聞くことはできない。視線と、心の中の声で2人は会話をして、惹かれていくのだ。
その描写が繊細なのにリアルで、きっといくつか実際にあったエピソードがあるのだろう。
この女性が気まぐれで男の肩に寄り添い、触れようとすれば離れてしまう描写は、まるで志乃さんだ。
だが、突然自体は一変する。それはーーーー
〜〜〜♪〜〜〜♪
ーーーと、そこで携帯がけたたましく鳴り、はっと本の世界から現実に無理やり引き戻された。