恋人⇆セフレ
第3章 素直に。
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「え?俺が澤木真(さわき まこと)の担当に?」
昼休憩の手前、俺の驚いた声がオフィスに響いた。
「そうそう。澤木先生、顔出ししたらメディアが食いつく程のイケメンでしょ?だから女を担当にしたら浮き足立って仕事にならないんだよ」
「でも…」
「何そんな渋ってんだ〜?お前昔は澤木先生の担当になりたいって煩かったのに」
それは昔だからだ!!!
澤木真ーー今最も注目されている小説作家。ミステリー、青春ものなど、多数のジャンルを手がけているも、どれも才能を見出している天才作家だ。
そして本名は、沢城真木。
俺はこいつの執筆を傍で見守るのが夢で、出版会社の編集部に入った。けど、もうその夢はーーー…。
「まあ、やってみなよ。早速今日挨拶がてら先生のところに行ってもらうから」
「え…!?」
何言ってんだクソハゲ!と叫びたいところだったが、私情で仕事を断るなんて馬鹿なことはできない。
つーかなんでこのタイミングなんだよ。誰か仕組んでんじゃねえの?
チラ、とクソ上司を見れば、下手くそなウインクでエールを送られる。おえ。
「…はぁ、仕方ねえ。行くか」
断れば俺の沽券に関わるし、背に腹は代えられない。
俺は前任の人に引き継ぎをしてもらった後、とてつもなく重たい足で慣れたあの家へと向かった。