恋人⇆セフレ
第13章 モヒート
次の日も、その次の日も。
新しい勤め先で仕事が始まってからも、終わったらすぐに飛び出してオフィス街で伊織を探した。
ハナミヤさんには、「もしこれで出会えたら赤い糸で繋がっているかもしれませんね」と茶化されたが、もしかしたら繋がってないのかもしれないと思うくらいには探した。
流石にプライバシーに反すると思ってハナミヤさんには伊織の会社名を聞かなかったが、ここまできたら聞くしかないかもしれない。
ちょっと、赤い糸とやらに期待してたとか、そんなんじゃねーからな。全然。
「…10時…。そろそろ帰るか」
今日は一段と冷える日だ。季節外れの雪が降るとかなんとか、予報で言ってた気がする。
暑さにも寒さにも弱い俺の生きづらい体は、これ以上無理をすると壊してしまうのは自分が一番わかってる。
ーーと、そう思って立ち上がった途端、ハラリと視界の端で白が舞った。
「は、」
それが雪だと分かった瞬間、次々とそれは降り出す。
真っ暗な空とは対比した白がキラキラと輝いて見える。こんなに綺麗なのに、この雪を見ていると1人だった冬を思い出して、キュ。と胸に痛みが走った。
「くそ、ふざけんな」
いい加減女々しいぞ、と舌打ちをして歩き出したところで、何か壁のようなものにぶつかってよろめいた。
「ーーーっ!?」
「と、すみません、大丈夫ですか?」
「い、いえ。こちらこそ」
どうやら人がいたらしい。上を見ていて気づかなかった。