恋人⇆セフレ
第13章 モヒート
「知ってますか?男同士でも、気持ちのいいセックスができるんです」
「!!」
こいつ、とうとう下心を全面に出してきやがった…!!
ゾワっと鳥肌が立ったと同時に、掴まれる尻。
やべえ、昔絡んできた男よりまずいかもしれない。
「僕と試してみませんか?きっと抜け出せなくなりますよ」
「っ、やめーーーっ」
その手が尻を撫で回し始め、スボンの隙間から手を差し込もうと手を上へ登らせたのを見やった瞬間、血管がブチっと切れる。
だめだ。もうこいつはブチ殴る。半殺しだ。そう心に決めた瞬間、ものすごい勢いで俺の体はそいつから離れた。
ーーーいや、引き剥がされた。
「、」
ドス、と硬い何かに背中がぶつかり、落ち着く香りに包まれる。
あ。と俺が声に出す前に、真面目そうな男が「誰だよお前!」と怒り狂ったような声を上げた。
「あんたが誰だよ」
聞いたことのない、地を這うような声。
温度も感じない、冷たい声。
俺を受け止めるのに背中に腕を回し、掴んだ手には痛いくらいに力が入っている。
「僕と彼は今から愛し合うんだ!邪魔をするな!」
「…………」
頭上からは何も聞こえない。なのに、男は体を大きくびくつかせた。
ーーー気持ちはわかる。俺も、上を見れない。
「な、なんだよ、こ、これは同意で……」
「は?」
「ひっ」
たった一言。それだけだった。だが男が恐れるには十分だったらしく、腰が抜けそうな状態で「誰がそんな女みたいな男抱くか!」と叫びながら、逃げていった。