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恋人⇆セフレ

第13章 モヒート





「なんで、簡単に触らせてるんですか。なんでそんなに危なっかしくて、無防備なんですか。なんでーーー…」


そこまで言って言葉を途切れさせた伊織は、コツンとおでことおでこを合わせて、苦しそうに寄せた眉間をさらに寄せた。



「結局、俺が…、」



ーーーーーーと、伏せていた薄茶色の瞳を上げた伊織。



あ、キスされる。



そう思って、まぶたを閉じかけたその時。




「藤くん?」





伊織の肩越しから聞こえてきた、伺うような小さな声に、2人してぴくりと肩を揺らした。



驚きで見開いた伊織の瞳が、俺から離れて後ろに向けられる。



俺もその声を辿って伊織の肩から覗くと、小柄な男が不安そうな顔でこちらを見つめていた。



ーーーーあ。と思う。
俺を抱き寄せている腕を見て、泣きそうに顔を歪めている、俗に"可愛い"と言われる男。
男だというのに線が細くて、守りたいと思わせるような雰囲気を漂わせ、今も伊織の心を揺らしているのではないかと思う。



ーーーー多分、…いや、絶対、こいつが伊織にアピールをしているという男だろう。


「……急に走ってどこかに行くから、大丈夫かなって心配になって…」


「あぁ…ごめん、大丈夫だよ。知り合いが変な人に絡まれてたから、助けてたんだ」



「そ、そっか。えと、部長たち先に入ってるみたいだけど…」



チラ。と小柄の男も俺を見たおかげで、目がバッチリと合う。クリクリとした大きな瞳は潤んでいて、なんだかこっちが悪いことをした気持ちになる。



ーーーーまるでチワワみたいな男だ。

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