恋人⇆セフレ
第3章 素直に。
「珈琲は砂糖2つで良かったよな?」
「え、あ、ああ」
動揺して声が揺れる。
なんでーーー…。
「…?どうした?顔色悪いぞ?」
両手に珈琲を持った真木が、心配そうに俺の顔を覗き込む。
心配そうに、と言っても、眉が少し下がっただけの、分かりづらい表情。
昔はもっと感情を出せなんて言ってたけど、いつしかこいつの固すぎる表情筋には何も思わなくなった。
けど…。
「随分楽しそうだな」
「は?……、」
俺の目線を辿った真木が、ピタリと動きを止める。
無造作に机の上に置かれてあった写真の中の真木は、俺が見たことがないほど優しい笑顔を浮かべていた。
ーー隣に写っているのは、昨日見た女だ。
「…へーえ。なるほどな」
血が滲むくらい、強く唇を噛みしめる。
もういい。短気な俺よ。よく我慢した。
だがもう我慢がならない。仕事と私情を分ける?そんなのくそくらえだ。
「おい、馬鹿真木」
キッと真木を睨みつける。
けど、こんなに怒りを見せてるのに焦りすら見せず、固く唇を結んでいる真木に、更にイライラする。
「なんで担当変更を承諾したんだよ。俺だって分かってたんだろ?それに、一方的に終わりにした癖にいつも通り接しやがって。この写真もわざと置いてたのか?」
「……」
「はっだんまりかよ。今迄俺が散々振り回したからその仕返しだったりして?いつから捨てようと思ってたんだよ。
ーーーそれで?今こうやって俺が喚いてんの見て満足か?」
「……」
「答えろよ。今まで一人だけ浮かれてた俺が馬鹿みてえだろ」
「…、」
「…っなんとか言えよ!」
ダンッと机を拳で強く叩く。ヒリヒリとした手の痛みは、心臓に比べれば全然痛くない。