恋人⇆セフレ
第3章 素直に。
シン、とした空気の中、俺の荒い呼吸だけが音を立てる。
「……」
けれど暫く時間が経つと、真木はカタンと珈琲を机の上に置いた。
「そんなに、思い詰めてるとは思わなかった」
「は……?」
そして真木が紡いだ言葉は、全くもって望んでいたものじゃなくて。というか逆に俺を苛立たせる言葉で。
怒りのゲージを溜めていく俺を知ってか否か、写真を手に持った真木は、見えないようにそっと裏返した。
「そんなに、怒ってくれると思わなかった」
「…何わけわかんねえこと言ってんだよ」
真木のしゅっとした切れ長の目が、長めの前髪のカーテンで隠れる。
おい、俯いてんじゃねえ。
「悪い。何も説明できずにあんな別れ方をして。言葉が足りないのは自覚しているけど、理由は言えないんだ」
「はあ?意味わかんねえ。そんなんで俺が納得すると思ってーーー…」
と、ここまできたら最後まで追及してやろうと顔を覗き込んだ俺は、ひゅっと息を飲んだ。
「…なん、だよ。その顔」
「…っ」
ーーーー覗き込んだ真木の顔は、今まで見たことがないくらい赤く染まっていた。
まるで林檎のように。
「ちょ、ちょっと本気で意味がわかんねえんだけど、どこに赤くなる要素あったんだよ?」
「…いいから見るな。珈琲でも飲んどけ」
「痛!」
ぐいっと大きな手が俺の顔を包んで、もっと覗き込もうとしたのを押しのけられる。
手を剥がそうにも無駄に力が強くて、ペシペシと腕を叩くもそれは剥がれることはなく。