恋人⇆セフレ
第13章 モヒート
「今日は温かいお茶です。体の芯から温めてください」
「…ん」
母親のような言葉を連ねた伊織が、トン。とテーブルに煎茶の入ったカップを置いた。
ーーーーなんだか、解せない。
帰った途端お風呂に強制的に入らされ、伊織のでかい服を着させられたこっちは緊張しているのに、伊織のやつ、全然普通だ。
さっきの告白、なかったことにされてねえよな…?
と、多分すごい顔をしながらお茶を飲んでいたのだろう。
我慢できないというように伊織が吹き出し、「可愛いなあ」と聞き捨てならない言葉を呟いたと思ったら、体育座りしていた俺を後ろから抱きしめた。
ーーーち、ちけえ!!!
「志乃さんから、俺と同じ香りがする」
慌てる俺などつゆ知らず、首筋に顔を埋められる。
こっちの心臓はもう馬鹿みたいに騒いでるってのに、こいつは…!!
「っあ、当たり前だろ…。お前んちのシャンプー使ったんだから」
「うん、志乃さんが俺の部屋にいるのがつい嬉しくて」
「〜〜〜〜っ」
もうやめてくれ。さっきの話とやらはいつしてくれるんだ。
頼むから、久しぶりすぎて伊織耐性がついていない俺を殺そうとするな…!!
もう嫌だと顔を自分の膝に埋める。
(だってこいつ、明るいとこで見れば見るほどマジでいい男なんだもん…!!!)
凛々しい眉に、少し鷲鼻で、けれど小鼻の小さな高い鼻。眉と近く、綺麗な二重で、色素の薄い茶色の瞳。薄く横に広い唇。
茶髪の時の今時の人気男子っていう印象は、黒髪に染めただけで色気のあるいい男になってしまった。