恋人⇆セフレ
第13章 モヒート
「えっと…」
「あ”?」
ーーーが、伊織の煮え切らない態度に、そんな心配など一瞬で吹き飛び。
俺は会心の力で伊織の腕から抜け出して、ギロリと睨んだ。
「おい、なんだよ」
「、」
正面から見た伊織の表情は声で感じた通り、気まずそうな顔で目を泳がしていて、脳内でピピー!!と笛を鳴らす。
ーーーー取り締まりの時間だ。
「吐け」
「うっ、」
「は、け、よ」
伊織のシュッとした輪郭が歪むんじゃないかってくらいの強さで両手で頬を挟み、至近距離で睨みを効かせる。
答えによっては、伊織の頬は無事では済まないだろう。
「ひゃ、ひゃべれないでふ」
「…ちっ仕方ないな。30文字以内で簡潔にまとめろ」
一時の釈放で手を放してやると、伊織は観念したのか頬を摩りながら深くため息を吐いた。そして、そのまま長い指で頬をさした。
「不意打ちで頬にキスされて、今はこれで許すよって…言われました…」
ーーーーーーーー…。
伊織の透き通った茶色の瞳が、申し訳なさそうに伏せられる。最後の方なんか消えかけの声だ。
ふーん、きすね。
「よし、ベッドに座れ」
「え?えっと、はい」
伊織なりに罪悪感があるのか、俺の突然の命令に戸惑いながらも素直に従う。
「ーーーー、」
そして、俺は伊織の膝に跨り、今度は優しく頬に手を添えて、伊織がさしていた頬に唇を押し付けた。