恋人⇆セフレ
第13章 モヒート
一瞬だけ触れたその感触を、伊織はぽけっとした顔で確かめるように手で撫で。
瞬時に顔を赤く染めあげた。
「え…えっ?!」
「うるさい」
「し、の…んぅっ」
今度は、馬鹿みたいに驚く伊織の唇を塞ぐ。イライラをぶつけるように激しく噛みつくキスをして、乱暴にしたところを舌でなぞってやる。
だってもう、ムカつきすぎてどうにかなりそうだ。
「あ、待ってくださ、」
「やだ」
言葉ごと飲み込むようにキスをして、伊織の頭を抱え込む。搔き抱いてるせいで黒髪の柔らかい髪がいろんなところに触れてくすぐったい。
「ん、ふ…っ」
ちゅ、ちゅるっ
久しぶりの伊織の唇は、もっともっと甘くなっていた。
この甘さを知ってるのは、俺だけだ。
この唇も、伊織の柔らかい髪も、甘い声も、全部全部俺のものだ。
あの男にも、他の奴にも知られたくない。
触れることすら許したくない。
「ーーー志乃さん」
「っうるさいっ」
一瞬だけ離れた唇をもう一度くっつけようとしたのに、「待って」と伊織に止められる。
「待って、志乃さん」
そして、今度は伊織に両頬を捕まえられて、鼻と鼻の先を優しく触れ合わせた。
キスで乱れた呼吸の中に、甘さが混じる。
「これからは全部言って。心の中だけじゃなくて、全部口に出して」
「っ」
「俺も、志乃さんの全部を受け入れたいから」