恋人⇆セフレ
第4章 上書き
「ん」
なんとも気の利く男だな、と思いながら頷いて、指先を握られたままカフェへと向かう。
…また観に行きましょう、か。
ーー俺は、またこいつとここに来ることはあるんだろうか。
ーーーーーー
水族館の外に出た頃には、空がオレンジ色に染まっていた。朝から入ったのにもう夕方って、どんだけはしゃいだんだよ。
一回休憩したとはいえ足はクタクタだし、お腹もペコペコだ。
俺の疲弊しきった様子を見た男が、クスッと笑う。
「ね、志乃さん。まだ時間ありますか?」
「あるけど流石に腹も減ったし疲れたぞ」
「はい、そうだろうと思って、近くの居酒屋予約してるんですよ」
項垂れていた俺の顔を覗き込むようにして腰を曲げ、無邪気にニッと笑った男。
「ふはっお前最高」
どこまでも要領のいいやつだ。
おもわず笑った俺に、男も楽しそうに笑って「行きましょうか」と言った。