恋人⇆セフレ
第4章 上書き
「乾杯」
カチンッと気持ちのいい音を立てて乾杯して、一気に冷たい生を喉に流し込んだ。
今日は結構暑かったのもあり、いつも以上に美味しいと感じる。
「結構飲めるタイプなんですね」
「ん?んー、そうだな。めちゃくちゃ強いタイプじゃないけど、顔に出たりしないな」
「へぇ〜!
俺は弱い方なんですよね。俺も赤くはならないんですけど、飲みすぎると喋り続けちゃうタイプらしいです」
「は?なにそれ面倒くさ。3杯までにしといて」
「やですよ」
ふはっと小さく吹き出して笑った男に、釣られて笑ってしまう。なんなんだろう、こいつのオーラ。最初は面倒だと思ってたのに、話せば話すほど解されていくような…。
「そういえば、お前何歳なの?成人してるの実は意外だったんだけど」
「えっ?そんな若く見えますかね?今は21歳です。これでもバスケ部のサークル長なんですよ」
あぁ、やっぱりバスケか。いかにもスポーツマンって見た目だもんな。
真木も、スポーツ出来るくせになんの部活にも所属せずに、昼休みとか放課後とかずっと図書室に篭りっぱなしだったな。大学生になってもそれは変わらず、かなり人気はあったけどずっと本ばっか読んでるから俺としか喋ることはしていなかった。
「……って、何思い出してんだ…」
こうやって気を抜くと真木のことを考えてしまう。折角、今日は思い出してなかったっていうのに。
「志乃さん…?大丈夫ですか?」
「ん、なんでもない」
心配そうに俺を見つめる視線から逃れるように、生を煽ぎ飲む。