恋人⇆セフレ
第4章 上書き
お察しのとおり、大学2年の時、俺と真木は別れていて、"友人"の関係だった。
今だから言えるが、成人してからそういうサークルに入った俺を気にかけて欲しかったのだ。
当時そんなに酒が強くなかった俺は、すぐに酔っては真木を呼び、「だから無理するなって言っただろ」と、優しくも呆れた声を向けて欲しかったのだ。
そして、いつかははっきり覚えてないが、数度目の迎えに来てくれた帰り、
そんなに心配なら俺を囲っておけばいいだろ。
酔った勢いでそんな言葉を確か吐いた気がする。
あの時の真木の熱情を孕んだ瞳を、俺は今だに覚えている。
『全然手出してこねえしつまらねえ』と、可愛げもない拗ねた言葉で別れていた俺らの初めては、恋人としてではなく、セフレとしてのものだった。
思い出せば思い出すほど、あの時の自分が恥ずかしくて顔を顰めてしまう。
「うん、若気の至りだったな、完全に」
「…結構大胆な人だったんですね…」
「ふはっまあそのサークルは3ヶ月くらいで辞めて、あとは真面目に映画同好会と登山部に勤しんだよ」
「映画と登山部ですか、いいですね」
「まあな。時間があればーー…」
と、そこで言葉を飲み込んで、おい。と自分にツッコミをいれる。
今、俺はナチュラルにこいつを誘おうとしてなかったか??時間でもあれば映画とか観に行かねえ?って?それとも山登るか?って?
ポト。持っていた枝豆を落として、首を傾げる男におしぼりを投げつけたくなる。お前のその警戒心を解くようなオーラが悪い!!なんて理不尽で怒鳴ってやりたいくらいだ。