恋人⇆セフレ
第5章 俺の犬
明らかに強がってるの、バレバレなんだよ。
ーーポメラニアンのくせに。
絶え間なく漏れ出る喘ぎ声の隙間から、どうにか聞き取れるように、慎重に名前を呼んだ。
「い、おり」
付き合える確証なんてないのに、馬鹿みたいに俺を待ってるこの犬の名前を。
「え…」
「っいおり」
もう一度。さっきよりもはっきりと名前を呼ぶと、ガバッと勢いよく体を起こした伊織は、間抜けにも口を開いて固まった。
勿論、俺のをしごいていた手も止まっていて、徐々に引いていく快楽にホッとする。
「呼ぶ名前、間違えてませんか…?」
「馬鹿、そんなわけないだろ…っ」
荒い呼吸をなんとか整えながら、バシッと硬い腕を叩く。伊織はそんな攻撃に痛がるそぶりも見せず、ぽかんとしているだけだ。
その顔がおかしくて、軽く頬をぺちぺち叩いてやった。
「認めるよ。お前は俺にとってどうでもいい奴なんかじゃない」
「え、あ…えっ?……それって…?」
「だからって好きって分かったわけじゃねえ。でも、お前に触られるのは嫌じゃない」
「ーーーーーー…」
我ながら卑怯な選択だと思う。結局は保留のままってことだ。
でも、こうして触られたらやっぱり嫌なんじゃないかと思ってたのに、触られることに対しては1つも嫌悪感がなかった。
どれくらいかははかれないけど、伊織が俺の中に徐々に入り込んできているのは確実で。