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恋人⇆セフレ

第6章 悪夢





瞬間



「すぐ帰れ」



俺は仮面を被るのも忘れ、真木にそう言い放っていた。




「え?」



開けた瞬間そう言われたことに困惑する真木を睨みつける。



誤解のないように先に言っておくけど、八つ当たりでも、突然来た真木に対しての怒りでもない。きちんとした理由はある。



「顔色が悪すぎます。熱があるんですよね?」


「熱…?」


「鈍すぎるにも程があるでしょう。唇の色も悪いし呼吸も少し乱れてますよ」


「あぁ、だから若干ふらつくのか」とボヤいた真木の頭をはたきたくなる。



昔からそうだ。何故か周りも本人も倒れるまで体調不良に気づかず、結局最終的にいつも俺が世話をしていた。



ーー暑くなり始めた頃、真木はすぐに食欲が失せ水分をなかなかとらない上、睡眠を削って小説を書くものだから、気をつけろと常日頃言っていたのに。


俺はため息を吐き、真木が持っている預かり物らしいそれを受け取ってから玄関の扉を大きく開けた。


「タクシーを呼びます。水も持ってきますので玄関に座って壁にもたれててください」


「構わない。歩けないほどじゃない」


「…そう言って昔倒れたのは誰でした?」


「……俺だな」


「分かったら座っててください」



ぴしゃりと言い切ると、真木は苦笑いを浮かべてフラつきながら玄関に座った。



それを確認して、水を取りに行こうと靴を脱ごうとしたところでーーー…



「うお!?!?!」


「!?」


でかい伊織の靴を履いたのが災いし、物の見事に入り口ですっ転んだ。



大の大人が。しかもカッコつけた後に。



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