恋人⇆セフレ
第2章 お前がそうするなら、
思わずはあ?と言いそうになった。
余計なお世話だ。俺がどこで飲もうが食べようが、タバコを吸おうが吸わまいが、お前には関係ないだろう。
「いえ、たまに気分で吸いたくなる時があるんですよ」
と、腹の中では何を思っても、絶対に顔には出さない。会社の人間も、昔の同級生も、こんな俺のことは知らない。仕事で更に鍛えられた仮面は、絶対に剥がすことはない。
ーーー知っているのは真木だけだ。
「そうなんですね。すみません急に。少し、落ち込んでいるように見えたので」
「…お気遣いありがとうございます」
「いえ、こちらこそいつもありがとうございます…。
……あの、もし何かあれば、聞くだけでもできるので…!じゃあ、ごゆっくりどうぞ」
耳を赤く染め、逃げるように仕事に戻っていった男の背中を見送って、小さく溜息を吐く。
ーーー不思議なことに、"同類"ってなんか分かるんだよなあ。
多分向こうも俺が"こっち側"って気づいてる。だからいつもあんな熱い視線を向けてたんだろうな。
「…話しかけてくる勇気ねえと思ってたけど、ここも今日で来るのやめるか」
面倒ごとはごめんだし、年下の大学生に興味もねえ。
ーーー…決して、アイツを待ってるわけじゃない。絶対に。
またどうせ戻って来るとか、思ってねえんだからな。