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恋人⇆セフレ

第6章 悪夢





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「橘1人だけで弟の面倒を見るのは大変だろう。困ったことがあったらいつでも先生に言ってくれよ」



「橘君、お母さんがこのお弁当渡してあげてって。お菓子しか食べないのはダメだよ」



「昨日クソ親父がさ〜、「おい!」」
「あ…悪い、橘……」




『大丈夫』。
この言葉を何度口にしたか分からなかった。心にも思っていないことを何度も口にする事で、元々捻くれていた性格は益々複雑に捻じ曲がっていってしまったように思う。



「余計なお世話だっつーの」



ーー高校1年の冬。両親が不慮の事故で死んだ途端、周りから腫れ物扱いされていた当時の俺は、どうして一緒に死ねなかったのだろうと思っていた。



子供だけ取り残されて可哀想だやら、これから子供だけで生きていくのは大変なのにやらと口々に言われ、なら一緒に死ねば可哀想じゃなかったのか?と捻くれた言葉が出そうになるのを何度堪えたか。




だが、気を遣われることに気を遣ってしまい、疲れきっていた俺にも癒しはたった1つだけあった。



それは、毎日毎日、飽きもせず放課後になると図書室にいる奴だった。




「真木、まだ帰んねえの?」


「んー」


「帰りクレープ食うんじゃねーのー」


「んー」


「クソボケ真木」


「んー」


「…その原稿捨てていい?」


「それはダメ」


別に動かしてない俺の手を、苦笑しながら握った男。


聞こえてんじゃん、と唇を突き出して拗ねれば、さも当たり前のようにキスをされた。



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