恋人⇆セフレ
第7章 木漏れ日
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーー
一般の人との試合と聞いていたから和気藹々と行うのかと思っていたら、思いのほか白熱した試合で、志乃はただただ呆気にとられるばかりだった。
バスケの試合といったら、学生時代の体育でしか見たことがなかったから、本気の試合とはどういうものなのかを目の前で見せつけられる。
中でも伊織は見事な動きだ。
「速すぎて目が追いつかない…」
伊織がでかい体を生かして敵を前に進ませず、少しの隙を見てボールを奪う。そして仲間にパスをし、すぐに移動するとボールをもらってあっという間にゴールを決めてしまう。
あんな遠くからシュートして入るのかよ!?
ディフェンス、ドリブルの技術、どれを取っても一番目立つ伊織は、不本意ながらもカッコいいと感じてしまう。
なるほど、あの動きや顔つきを見るに、シェパードはあながち間違いではなかったようだ。
「ナイス藤!!」
シュートを決める度、仲間から頭をわしゃわしゃされている伊織は、ブザーが鳴るとともにゴールを決め、圧倒的点差で勝利に導いた。
「志乃さん!」
そして、負けたにも関わらず、清々しい顔つきの相手側と笑顔で握手をした伊織は、くるりと方向を変えて、一直線にベンチで見ていた俺の元に駆け寄ってきた。
(子犬になった…)
「俺志乃さんの弁当があると思ったらいつもよりシュートが決まりました!志乃さんパワーですね!」
「なんだよその恥ずかしいパワー。逆に食べて腹下すかもしんねえぞ」
「志乃さんが作ったんですからそんなことないですよ。ね、お腹減りました」
根拠のない信頼に居た堪れなくなるが、こんなに喜んでくれると思わなかったから気分は悪くはない。