恋人⇆セフレ
第7章 木漏れ日
「つーかお前凄いな。素人目でも分かるくらい上手かったぞ」
「あははっカッコつけたくて頑張りました」
「謙虚なやつ」
俺と目線が合うようにしゃがみこんだ伊織の額に、買っておいたタオルを押し付けて汗を拭いてやる。
雑ながら髪も拭いてやると、気持ちよさそうに目を瞑る伊織が見えて、自然と口角が上がった。
「ふーーじ!」
と、その瞬間。元気な声が聞こえたと思ったら、伊織の体にドンっと衝撃が走った。
「うおっ」
倒れこんできた伊織を咄嗟に避けると、前傾した伊織が流石の反射力で床に手をつき、倒れこむのを回避する。
なんか塊が飛んできたぞ…。
「ってぇ、東、急に突進してこないでよ」
「悪い悪い」
悪びれた様子なく伊織の背中からひょこっと顔を出したのは、試合中伊織とよく連携していた小柄な男だった。
短い髪にくりっとした瞳と、その異様な元気さは猿を彷彿とさせる。
「で、突然どうしたの」
「いや、お前目当ての女子たちが入り口で群がってるからどうにかしろって思ってさー」
「え?」
不服そうに唇をすぼめた男が親指を入り口に向けたのに釣られ、俺と伊織がその方向に目を向けると、「キャア!」と黄色い歓声が起こる。
なんだあれ。
女、女、女。
試合中夢中で見すぎて全く気づかなかったが、所謂イマドキの女子大生が飛び跳ねながらこっちに手を振っている。
ーーーこっちというか、伊織に。