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恋人⇆セフレ

第7章 木漏れ日




きっと弁当の中身もぐちゃぐちゃだ。



でも、もうそんなことを考える余裕なんてなかった。1つの可能性がただただ恥ずかしくて、予感があったにせよ、俺はこんなに軽い奴だったのかと失望した。



そう思っても、今までの伊織との思い出が次々と思い浮かんで。眩しいくらいの笑顔とか、ちょっと拗ねた顔とか、仕方ないなって顔とか、コロコロ変わる表情を見るのがいつしか楽しくなっていたのは自覚していたのに。



あんな醜い嫉妬で気づくなんて。



「はぁ、はぁ…っ」



息ももうとっくに切れ、吸い込む空気が生暖かくて喉にべったりと張り付く。


このままでは本当に吐きそうだと足を止めたのは、人気のない憩いの場だった。


雑草や草花が沢山咲いているが手入れが行き届いており、木々が茂るそこは幾分か涼しい。そして、隅の方にある木のベンチに座ろうと限界に近い足を進めようとしたその時。



「志乃さん!」


「っ!?」



突然後ろから強く腕を引かれ、大きな何かに包まれた。


ふわりと香る、嗅ぎ慣れた優しい香りに混じる汗の匂い。お互い上下する胸と、吐き出す息は激しいのに、酷く安心し落ち着くこの体温。



「なんで来たんだよ…つーかなんで簡単に追いつくんだよムカつく」



いつものごとく素直じゃない言葉を吐き出すと、俺を抱き締めた男はぎゅっと力を込めた。






「だって志乃さん、もう俺のこと大好きじゃないですか」






いつもは笑う俺の捻くれに、今回は一ミリも笑みのない真剣な声が空気を震わせた。




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