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青色と黄色の短編集

第14章 そばにいる



今1番会いたくない相手である。




「どうかしたのか?」



「すみません…資料が見つからなくて…」


「そろそろ整理しないとだな…」




そう言うと社長は資料を探し始めた。



大企業の社長、というと
偉そうにしているイメージがあるが、

このお方は自ら起業した苦労人であり
社員のことを尊重している。


社長だからといって自分が必要としている資料を
部下だけに探させるのはいかがなものか、

というお考えなのだと思う。



そういう優しさもあって貴方に惚れたのだ。



ダメだ、今社長のいい所を挙げていったら
余計に悲しくなってしまう…。



そんな自らの制御も虚しく、
私は涙を止めることが出来なかったらしい。




「どうしたんだ…?何かあったのか?」



「あっ、いえ…」


「資料探すだけで泣かないだろ」


「ですよね……」




「冷静な君が泣くなんて、理由が気になる…」




「あの…」




「なんだ…?」







「好き……って言ったら…困りますよね……」





「…な、なにが…?」









「私が、貴方を好きと言ったら……」



「……」



「社長はどうやって断りますか…?」



ついに気持ちを伝えてしまった。


明日から、
もうこの会社に来ることはないかもしれない。



最後にきちんと振ってもらえれば幸いなんだ。






「温厚な貴方が丁寧に断るか、
何言ってんだって気分を害されるか、

どっちかなって…考えていたんです…」





「じゃあ…試してみる?」



「えっ…?」



「君も、私のセフレになる?」




「え…」




「君は私の秘書としてよく働いてくれている。

だから、私のものになるには

次はプライベートの面でも見定める必要がある。

相性は大切だと思うだろう?」




これは…チャンスをくれたのか。




「私…男ですけど……」




「昔はどっちも食ってたから気にすんなよ」




衝撃…。





でも私は男の人と行為したことなんてない。


ちなみに女性ともしたことは無い…。




社長を満足させられるのだろうか。




今晩9時にホテルに来るように言われ、

社長は倉庫を後にした。



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