
青色と黄色の短編集
第14章 そばにいる
約束の時間の10分前にホテルの部屋へ向かうと
既にソファーに座る社長がいた。
「お待たせしてしまいすみません…!」
「いや、君は時間前に来ている。問題ない。」
「あ、あの、なにか飲み物でも…」
「緊張しているんだね、こっちに来なさい」
「あっ、はい…!」
隣に座るよう促される。
「二宮くんは俺の何に惚れたの?」
「あの、私が初めて社長に珈琲を淹れたとき、
社長が褒めてくださって…」
「ここでは社長って言うのやめなさい」
「で、ではなんと…?」
「智さん、でどうかな?」
「智さん…わかりました…っ」
「うん、いい子だ。…続けて?」
「あっ、それで…智さんの笑顔素敵だなって…
秘書の私にも丁寧に接してくださいますし、
毎朝おはようと返して頂けるだけで
私、とっても嬉しくて…
優しさを勘違いして好きになってしまって…」
「じゃあ、私が他の女を抱いていたら、悲しい?」
「…初恋のお相手が誰かの旦那様になるのは…
少し悲しいです…
この気持ちは…いけないでしょうか…?」
「素直なんだね、」
そう言うと社長は私の頭を撫でた。
「あっ……」
「目をつぶっていなさい」
私は目をキュッと閉じた。
数秒後に、私の唇に社長の唇が重なった。
びっくりして目を開けると、
社長が優しく笑っている。
「初めてなのか?」
「恥ずかしながら…」
「分かった。任せなさい。」
そう言った社長は、
今度は長く深いキスを私にくれた。
「ん…んぅ……はぁ…っ…」
自分の声とは思えないくらい
変な声が出てしまって恥ずかしい…。
「反応がいちいち可愛いね…」
ただただ社長を見つめるしかなかった。
「ベッド行こっか」
その一言に、私の鼓動は一気に高まった。
