テキストサイズ

先生

第5章 合図




「鈴木くんにノート見せてもらってました」


『なんで?』


「書いてないとこあって黒板ももう消されてたから。」


『なんで書いてないとこがあんの?その時点でおかしいよ。見してもらうにしても喋りすぎ』


「他のこと考えてました。それはわかんないとこがあったからで…」


『先生は俺。わかんないとこあったら俺んとこに聞きに来ればいい。』


「なんでそんなこと簡単に言えるんですか?」


『先生と生徒の在り方はそうだから』


淡々と喋る先生は気に食わない


あの時みたいな優しい先生が欲しい


割り切れている先生になぜか苛立ちが募る


「考え事…ノート書けなかった理由は先生のこと考えてたからだよ。どうやって話しかけようとか口実考えたり周りに変に見られないように、でも少しでも多く関われるようにするにはどうしようとか。」


『ねえ』


「…」


『もっと割り切ろうよ。』


私はその一言で暗闇のどん底に落とされた気がした


『っ…、ごめん。あのね西本。』


「いいです。」


私はその一言だけ先生にぶつけて自分の教室へ戻った


生きる気力さえも失った気がした


なんなんだろう


今までなんだったんだろう


もっと割り切る ってなに?こんなに努力してるのに。


意味がわからない


あんなことがあって割り切ってないわけないのに


無意識に考えてしまうだけなのに


それが恋なんじゃないの?


もうよく分からなくなった私は机に伏せる


もっと割り切る…ね。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ