先生
第5章 合図
『それが今の気持ちなんだ?』
「今もかもしれないね?」
『怒ってんの朝のことだよな、ごめん。』
『西元なりに割り切ってるだろうし、苦しめた俺が言える立場じゃないのに。』
先生は真剣な顔つきでそう言ってくれた
先生の大きな手が涙で濡れた私の頬を撫でようとする
私の頬に触れるか触れないかのギリギリで先生は手を戻す
『学校でこういうことすると割り切れなくなるよな、ごめん。』
どこか寂しげな目でまた夕日を見つめる彼
「こういうとこじゃなかったらどこでできるの?」
『え?』
『私たちの場所ここしかないのにここ以外のどこでなにができるの?先生の気持ちもうよくわかんないし先生に今の私の気持ちなんてわからないと思う。』
こんなことが言いたいんじゃないのに
私はただ先生が好きなだけなのに
『俺の気持ちは何も変わってない。』
『お前の気持ちわかんないしここ以外で会える場所も時間もないけど俺の気持ちはあれから何も変わってないから。これだけ知ってて欲しい』
そう言った後先生はただ涙を流す私の頭をポンッとしてくれた
これがなんの合図なのかはわからないけどあの日以来、先生が触れてくれることはなかった私にとっては大きな意味と可能性を感じた
『誤解だけ解きたくて。少しでも話せてよかった。俺、職員室戻んないといけねえから…また明日な』
先生の言葉は魔法のようにどこまでも私を翻弄させる