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好きだって気づいたとき

第1章 色濃い2ヶ月

「あっ、これ学校で撮った写真だ。
そう言えば先生に内緒であいつ、カメラ持っていってたなぁ。
これ、あいつと登り棒を登る競争したときの写真」


放課後、少し残っては登り棒やうんてい、ジャングルジムで遊んで帰ることがあった。
遼太にはどれも勝てたことがない。
あいつ、遼太はまさに猿。
登り棒を登るときも、うんていも、ジャングルジムで鬼ごっこしても、追いつくことができない。
でも何か悔しいとは思わなかった。
むしろ遼太に追い付きたいと、必死に追いかけた。
だから運動神経のよさは、遼太がクラスで1番、自分で言うのもなんたけど俺が2番かな?
雅人も健人もこの猿・・・いやいや遼太にさりげにきたえられているのか、運動神経はいい。


「まぁ、早い話が俺達みんな猿ってことだな。
猿と言うか、野生児化してたってことか?」


自分の顔をマジマジと見たことないけど、このときの俺、凄くいい顔をしてる。
心底楽しんでいる顔。


「本当に楽しかったな・・・
あっ、これは卒業式のときの写真だな。
野生児化していた俺達の真面目な顔。
超笑えるんだけど」


親父のネクタイみたいに縛らなくてもいい、簡単に装着するネクタイだけど、みんなビシッ!ときめている。
まさにこれを“馬子にも衣装”て言うんだろうな。
こいつらのこんな真面目な顔、見たことないよ。
俺が知らないだけかもしれないけどね。


「この写真、俺泣きそうな顔してる。
思い出のない学校のはずなのに、何か悲しくなってきたんだよな。
遼太達に泣き顔見られたくなくて、我慢したんだったな」


その写真を見ながら今、4年越しの涙が溢れてきた。



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