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好きだって気づいたとき

第16章 高校入学

俺は体を少し小さくして、何とか先輩の腕の中から抜け出した。


「先輩、何するんですか?」

「友哉いきなりごめん、びっくりしたよな」

「そっ、そりゃびっくりしますよ。
急に抱きついてきたりするから・・・」

「バチを嬉しそうに選んでる姿が可愛くってさ。
我慢できなくなっちゃって」

「我慢できなくなったって、どういう意味ですか?」

「意味も何も、お前もその気があったんだろ?」

「だからどういう意味ですか?」

「お前が俺の事、じっと見つめてくれるから、俺の事好きなのかなって。
俺はお前が部活に入ってきた時から、可愛いなって思ってたよ」

「見つめるというか、先輩の演奏を真剣に見ていただけですよ。
他のやつらも見てたと思いますよ」

「俺の事見ていたのはお前だけだった。
お前の気持ちを受け取らなきゃ悪いなと思って」

「勘違いさせたのなら謝ります、ごめんなさい」

「謝らなくていいよ。
でも俺は可愛いお前に惚れちゃったんだよ」


俺の顔を両手で包み込み、思い切り引き寄せた。
唇が触れそうになったとき、俺は思い切り先輩の胸を押し返した。


「マジ、やめてください」

「俺、友哉が好きなんだよ」

「先輩の事は好きですけど、そう言う好きじゃないんで。
失礼します」

「友哉待って・・・」


俺は床に置いてあったカバンを慌てて持ち、逃げるように先輩の家を飛び出した。
追いかけられてるわけじゃないのに、1度も後ろを振り向かず家まで帰った。


「先輩は俺の事そんなふうに見ていたんだ・・・」


一瞬、部活を辞めようかと思ったけど、先輩は今日で引退だから、もう関わる事はないと思い留まった。

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