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好きだって気づいたとき

第16章 高校入学

3年生が引退してから、1年生が本格的に太鼓を叩き出した。
俺達の和太鼓演奏デビューは文化祭。
同級生や先輩、先生達だけじゃなく家族も見に来る。
珍しく緊張してきた。


「おーい、頑張ってるか?」

「こんにちは」


先輩が時々指導に来る。
文化祭が近づいてくると、その回数が増える。
もちろんあの先輩も。


「友哉、もう少し体を真っ直ぐに」

「もう少し右手を内側に・・・そうそれくらい」


指導はすごくしっかりとして下さる。
でも時々直接手を握ったり、肩や背中、腰とかを触りに来る。


「腰をもうちょいおとして・・・でもって胸張って。
腕の角度はこう」


教えてくれてるのは凄くわかるんだけど、あの事があったから集中できない。
周りのみんなはそんな様子を変な目で・・・
いや、誰も見ようとはしない。
見てはいけないくらいに思っているのか?
夏休み、文化祭発表練習の中、暑さで倒れてしまった俺。
運が悪いことに、進学の事で登校していた先輩が見ていて、俺を抱えて保健室に連れていってくれた。
ベッドに寝かされ介抱してくれた。
汗を拭いてくれたり体を冷やしてくれたり。
朦朧としていても触られている事が嫌で仕方がない。
当たり前だけどこんな状態で抵抗ができない。
Tシャツの中に手が入ってきて、まだ汗でじっとりしている俺の体を触りだした。


「やめて・・・ください」


俺は声を絞り出した。
息が荒くなってきた先輩は手を止めることなく、俺の体を触り続けた。
激しい足音が聞こえると、勢いよく仕切られていたカーテンが開いた。


「友哉っ!」


遼太だった。
驚いた先輩は慌てて俺の体から手を離した。


「遼・・・太・・・」


助かった。

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